情熱

知人が出演する、池袋のある小さな劇場で芝居を見てきました。劇団は女性ばかりで、主催者は脚本・演出・出演をこなす女優。私の知人はこの劇団員ではないのですが、いつも呼ばれて出演しているので何度かこの劇団の芝居を見ています。今回はいつもと違い男性俳優を迎えての公演で、いろいろな「愛」の形、その勘違い、すれ違いを面白おかしくオムニバス様式で描いています。そして、最後にはこの主催者の気持ちなのでしょうか、無駄なことかも知れない、誰に認められるわけでもないけれど、いっぱい悩んで、苦しんで、真剣に生きている、朝になれば真っ白な明日が待っている･･･というようなメッセージが語られています。正直に言って、以前、自分が芝居をやっていた時にはこの手の小劇場系の芝居はちょっと青臭くて、面映ゆくて、苦手でした。けれど今は妙に素直な気持ちで見ることができます。そう、お金儲けとは縁のない小劇場での演劇活動、自分の信じることに向かってメッセージの通りに一生懸命生きている若い俳優さんたちに心打たれます。歳をとったから少しは気持ちに余裕ができたのでしょうか･･･。20081113_満月帰り道、自分の若い頃を思い出していました･･･。私はあんなに情熱を持って芝居をしていただろうか？！多分、持っていたのかもしれないけれど、そんなことを考える暇もなく毎日毎日を不安な気持ちを押し隠して生きていくのに精一杯だったような気がします。そんなことを考えながら電車を二駅手前で降りて歩いていると、学生時代に芝居を始めたころ、10年近く住んでいた街に通りかかりました。街はすっかり整備されて新しいマンションが並んでいます。演出家に「声が小さい、何を言っているか分からない！」と“駄目だし”されて、真夜中に駆け足をしながら大きな声で台詞の練習をした高速道路の高架下も、今は小さな公園になって噴水から水が勢いよく出ていました（今、思えば演出家が駄目だししたのは、実際に声のボリュームが小さいというより、台詞が聞こえてこない、意味が伝わっていないということだったと思います）。あれから何十年。私も変わったのでしょうね･･･失ったものも多いけれど、得たものもいっぱいあるなぁ。メラメラ燃える炎ではなくて、青くても決して消えない炎を燃やしていたい、そんな気持ちは昔のままですが。
（2008年11月13日）


atsuko_sugihara │Comments(2)│Monologue2008 
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この記事へのコメント

1. Posted by 志賀　繁之   2008年11月14日 20:24
平成四年三月、杉村先生との中国旅行での夜行寝台列車での会話、役になりきる役者魂、忘れてはいないのでしょうか、現在は歌一筋？、亦映像でのお姿拝見したいものです。
此処三日間、小春日和を越す温かさでした、明日から天候は落ちそうです。
今日、市内を用件がありあっちゃんの自宅前を通りました、お母さん、ご近所の方と立つ話？おげんきそうでした。
2. Posted by 杉原あつ子   2008年11月15日 01:58
役者魂は無くなっていないと思いますが、表現する手段、場所が変わったということです。
今は歌を通しての方が自分が目指している自己表現ができると思っています。
演劇に携わってきたことも、杉村先生に付いて学んだことも全て、今の自分の栄養になっているのだと思います。
ＴＶに出ないので、和歌山の方々にはお目にかかれませんが・・・

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